Sunday, July 2, 2017

[中小企業診断士] 中小企業診断士とコンサルティングファームの報酬

前回は中小企業診断士とコンサルティングファームの違いについて、取り組む課題、人物要件・行動特性について述べ、診断士資格取得が大手コンサルティングファームへの就職に役に立つのかどうかについて述べました。

今回は報酬の観点から、それらの違いについて述べたいと思います。

中小企業向け(中小企業診断士):
報酬は顧客中小企業から支払われる場合と、公的機関から支払われる場合がある。ある程度資金にも余裕があり、一層の成長を望んで、または将来想定される環境・状況の変化に備え診断を依頼する中小企業の場合、中小企業から直接報酬を受取る。受け取り方にも、テーマを決めコンサルティングを行うごとに報酬を受取る場合と、顧問契約のような形で毎月・毎週等、定期的に重要な会議に出席、または経営者の相談相手となり、期間で決められた額を受取る場合とがある。一方、公的機関から支払われる場合もある。中小企業診断士が公的機関に専門家として登録し、中小企業が公的機関に援助を求めてきた際、公的機関が中小企業に専門家として派遣する。公的機関は派遣費用のうち、全額若しくは一部を負担する。この場合、中小企業診断士から見た場合、顧客は診断先中小企業であり、また派遣元の公的機関でもある。派遣先中小企業、派遣元の公的機関双方から高い評価を受け、実績を積むことがが再び派遣されることに繋がる。顧問契約のような定期的に収入が入る仕事以外は、都度仕事に対する報酬を受けることになり、毎月の収入が一定とは限らない。自身で収入と仕事のバランスのマネジメントをすることが求められる。

大企業向け(コンサルティングファーム):
報酬は顧客企業から支払われる。中小企業向けのコンサルティングに比し、プロジェクト報酬の絶対額は高い。その分、コンサルティングファームは個人でなく企業として一定の品質を保ち、かつスピード感のある仕事で、いい意味で顧客企業の期待を裏切る仕事をし続けなくては、高いプロジェクト報酬を得続けることはできない。顧客企業も就職人気ランキングの上位にくるような会社ばかりで顧客にも優秀な人が多く、かつそのなかでもさらに優秀な人がプロジェクトに顧客側担当としてアサインされるため、そう簡単には満足は得られない。個人としても、一定程度以上の成果(顧客満足、売り上げ、コンサルタントとしての稼働)を出し続けることができれば、それが当該年度の評価となり、翌年の給与に反映され、12分割され(会社にもよるが)月給として支給される。

どちらも、自分・会社というブランドを維持・高め、仕事を獲得し続けるために常に価値・品質の高い、スピーディーなコンサルティングを提供し続けることが求められる。いかに顧客企業の役に立ち評価され続けるか、報酬はその対価であるということを考えれば、どちらも非常に緊張感の高い仕事であると言えます。

前回から、①顧客企業の抱える課題、②コンサルタントとしての人物要件・行動特性、③報酬の考え方の観点から中小企業診断士とコンサルティングファームの違い・共通点について述べました。それぞれ少しずつ異なるものの、①共通して持っておいた方がよい知識・考え方があり、②重要な課題や今後の進め方について自身の意見として提示できる必要があり(論理的にも正しく)、③いい意味で顧客の期待を裏切り続け仕事及びその報酬を獲得する、といった点では共通しています。そしてそもそもそういった仕事をする理由として、中小企業診断士であれ、コンサルティングファームであれ、顧客企業ひいては日本をよりよくすること(究極的には世界をよりよくすること)に貢献したいということがあるのではないでしょうか。そのような考えを持った人であれば中小企業とコンサルティングファームを並行して目指すことは決して無駄なことではないと考えます。

確かに大手コンサルティングファームへの転職だけを目指す人は、中小企業診断士の学習に1年、2年の時間をかけるよりは、コンサルティングファーム向けの履歴書・職務経歴書・志望動機書の作成や、面接・ケース面接の練習に取り掛かる方が手っ取り早いかもしれません。ただ、コンサルティングファームで働いた後コンサルタントとして独立したい、結果としてコンサルティングファームへ就職できなくても中小企業診断士として世の中を良くしたいといった夢を持っている人であれば、中小企業診断士・コンサルティングファームへの転職を併せてを目指すことは十分意味のあることであると言えます。中小企業診断士を転職やステップアップのための資格としてではなく、「コンサルタント」になるための足掛かりと考えてはどうでしょうか。

Saturday, July 1, 2017

[中小企業診断士] 中小企業診断士取得は大手コンサルティングファーム入社に有利か

事業会社で働いているころ、自己研鑽として中小企業診断士資格取得のための学習をしていました。また、資格取得してそれを武器に大手コンサルティングファームへ転職したいと思っていました。当時、診断士資格取得がどの程度大手コンサルティングファームへの就職に有利になるのかとウェブで調べたところ、中小企業のコンサルティングを行う中小企業診断士と、大企業を相手にする大手コンサルティングファームとではその業務内容も異なり、中小企業診断士資格は大手コンサルティングファームへの転職にはそれほど有利とはならず、中小企業診断士の学習に時間を割くことは得策ではない、という意見が多かったです。本当にそうなのか。ウェブ上では、他人への嫌味、妬みだったりそういったものに基づいた正確でない意見があたかも多数派であるように見えることも多々あります。そういった意見は信じない方がいいです。

自身はその後、中小企業診断士養成課程で実際に複数の中小企業向けコンサルティングプロジェクトを経験し資格取得、大手と言われるコンサルティングファームに就職したことで、中小企業向け、大企業向けのコンサルティングをそれぞれ経験しました。そのうえで、診断士資格は大手コンサルティングファーム入社や、業務に役立つのか改めて考えてみました。


1.まずはそれぞれで取り組むべき課題の特徴を切り口に、共通点の有無を考えます

中小企業の抱える課題(中小企業診断士が取り組む課題):
・限られた経営資源(資金、人材)をどう使って生きのびていくのか(金銭的余裕のある大企業以上に多い制約)
・マネジメント業務をどのように後継者に引き継いでいくのか(事業継承)

・国や自治体、公的機関の補助金や融資制度、専門家派遣等の各種制度のうち、自社に活用できるものはあるのか、どのように活用するのか
・顧客企業が海外進出したが、自社もついていくべきかどうすべきか

大企業の抱える課題(大手コンサルティングファームが取り組む課題):
・会社が今重点的に取り組むべき課題は何か(社会の動向まで踏まえ)
・会社の将来像はどうあるべきか、将来像までどのようなシナリオで持っていくべきか
・大勢の関係者のなかどのように合意形成を図り、決まった方針に対してどのような順序で社内コミュニケーションを行っていくのか

このように、確かに取り組むべき課題には大きな違いがあります。ただ、業務のなかで必要な財務諸表を見ること、固定費・変動費の考え方、マーケティングの考え方、会社法・特許に関する知識、組織の形態、システム・データベースの考え方等、会社の規模に関係なく共通して知っておいた方がいい知識、考え方は多くあります。学習を通してコンサルタントに必要なこれらの様々な視点を得ることは十分可能ですし、学習意図を大手コンサルティングファームでの採用面接で言及することはアピールにはなると思います。実際に、コンサルティングファームでは様々なテーマのプロジェクトがありますが、幅広い基礎知識がると新しいテーマへの足掛かりとなり、キャッチアップが早いと思います。



2.次に、コンサルタント自身はどうあるべきか、人物要件・行動特性から考えます

中小企業へのコンサルティングに必要な人物要件・行動特性:
①中小企業経営者の相談相手になれる(社員の人生・生活を背負い、常に仕事のことを考えている経営者と対等に話ができるだけの知識・自分なりの考え・気迫の持ち合わせ)

②国、自治体、中小企業支援機関の各種施策及びその活用方法についての見識がある
③国、自治体、中小企業支援機関とのネットワークがある(専門家としての登録、実績の積み上げ)
④セミナー、講演会等の講師として、経営についてわかりやすく整理して伝えられること

大企業へのコンサルティングに必要な人物要件・行動特性:
①論理的にものごとを考えられること(社内で意思決定・方針を展開する際に出されるであろうあらゆる意見・反対意見を想定、それでも方針が最も正しいはずだと言える必要があるため)

※特に大企業では、意思決定には様々な関係者がおり、どのようにして各関係者に納得してもらうか、鍵穴に合う鍵を作っていくような論理建てが求められます
②前例、類似する事例のない課題であっても、自ら考え、自分なりの対応方法をひねり出す

※顧客は世の中にない取り組み、自社では初めての取り組みに対してコンサルタントに協力を求めてくることが多いです

共通で必要な人物要件・行動特性
①自分なりの考えが本当に正しいのかと説明できるために論理的思考で他の方法・他の切り口も既に検討し尽くしていること(特に大企業でより重要)
②常に顧客の先を考えていることで、質問・意見に対し即答し、議論を踏まえその場で今後の主要な課題・進め方について提示できる(議論をスピーディーに進めることも価値のため、持ち帰って検討することは極力しない)
③ワード、エクセル、パワーポイントは顧客に教えられるくらい使いこなせているとともに、作業に費やされるスピードを極限まで短く、考える時間・顧客と話す時間を最大限多くすることを意識している

※②、③では、クライアントにさすが、と言われるくらいのスピード感でないとコンサルの存在が後押しになっていると思ってもらえないです

大企業へのコンサルティングや共通で必要な人物要件・行動特性については、資格取得に向けた学習のみで身に着けることは難しく、確かに中小企業診断士資格の学習ではその獲得には適していない、ということはできます。また、そもそも中小企業のコンサルティングに必要な人物要件・行動特性自体も実際には資格の学習だけでは難しいと言えます。そのため、これは日ごろの業務の中で、お客さんとの議論、社内の議論、社内のプロジェクト等を自らリードするなかで培うことが必要です。

1.及び2.を踏まえると、中小企業診断士資格の取得に向けた学習は大手コンサルファームで働くにあたっての基本的知識の獲得には有効であり、また面接でもアピールは可能。ただ、それだけでは中小企業・大企業にコンサルティングを行う場合ともに必要な人物要件・行動特性については十分に得ることはできないため、現職で意識的に経験を積んできた、結果そういった行動様式を身に着けてきたと言えることが重要です。中小企業診断士の学習をしつつ、会社では自ら率先してホワイトボードの前に立ち議論をリードしましょう!

Friday, June 9, 2017

[中小企業診断士] 診断士資格を活かして国際協力に携われる会社

診断士のなかでもニッチなのかもしれないですが、そのような志のある方に役に立つようにと思いまとめました。会社の社員募集要項に「中小企業診断士」と書いてあったり、JICA等の案件の入札情報から「中小企業振興」関連の案件を複数獲得している開発コンサルティング会社をピックアップしました。

日本開発サービス

http://www.jds21.com/
募集要項の資格の欄に「中小企業診断士の資格があると尚可」と記載があります。

アイシーネット

http://www.icnet.co.jp/
募集要項に「中小企業診断士などの各種専門技術、国家・公的資格を高く評価」と記載があります。実績のなかに、「中小企業海外展開支援案件」があります。

かいはつマネジメントコンサルティング 

http://www.kmcinc.co.jp/
事業内容で、「国際ビジネス支援部」があり、企業の海外進出支援を行っています。ODA部門の事業内容に「中小零細企業開発部」があります。国際ビジネス支援部に中小企業診断士の方が在籍されています。

ユニコ インターナショナル株式会社

http://www.unico-intl.co.jp/
募集要項に「中小企業診断士等の各種専門技術、国家・公約資格を高く評価」と記載があります。事業内容に、「中小企業振興分野では、零細・中小企業を対象とした振興策の策定、中小企業向け支援サービスの提供体制整備、中小企業診断士の育成制度構築、中小企業向け金融制度の構築及び品質・生産性向上(カイゼン)の普及など多くの実績があります。」と記載があります。

株式会社ワールド・ビジネス・アソシエイツ (WBA)

http://www.wba.co.jp/
中小企業診断士が中心となって設立・運営されている会社です。

グローバル開発経営コンサルタンツ

http://gdmc.jp/
こちらも中小企業診断士が中心となって設立・運営されている会社です。

株式会社コーエイ総合研究所

http://www.kri-inter.co.jp/index.html
事業分野に「産業開発/中小企業振興」があります。

と、学生時代に国際協力に関わりたいと思っていたが、JICA等限られた選択肢のなかで結局一般企業に就職した方も、診断士を取得することで、これらの会社で働き、国際協力に携われる可能性があります。これは、国際協力に携わることを目指している学生もあまり知らないと思いますし、携わりたいと思っていた人もあまり気付いていない事実だと思います。これが診断士資格取得+転職で夢をかなえる方法です。診断士資格取得自体が難しいと思うかもしれませんが、何年かに分けて一次試験を通過、その後養成課程に行けばいいのです。やりたいことが明確なら手段を選ぶ必要はありません。新卒でJICAに入団するよりも何倍も可能性が高いですよね?

で、そのJICAに中途で入社して活躍されている診断士の方もいます。

JICAで働く診断士
https://www.jica.go.jp/topics/person/20121225_01.html


私の記憶している限りでは、JICAやジェトロ等、こういう国の機関は以前は中途採用を行っていなかったと思うのですが、最近では中途採用をしているようです。JICAの募集要項にも「開発課題 - 民間セクター開発」の記載がありますね。ここが診断士資格の活かせる分野会と思います。診断士の方のインタビューでは、「国際協力も民間の仕事も現場感覚が大切。機会があれば、今度はプロジェクトの現場で案件に携わり、少しでも顧客である途上国の皆さんに貢献したい」と言われていますが、これはJICAや他の政府機関、国際機関は予算を持ってプロジェクトを実施する会社を入札で決め、そのプロジェクト管理をする、といったコーディネーター的な役割が多いのだと思います。相手国の現場で自らがプロジェクトに関わりたいのであれば、開発コンサルティング会社の方がいいのかもしれません。どのような形で国際協力に関わりたいのかを考えたうえで、働きたい場所を考えるのがいいかと思います。

Tuesday, June 6, 2017

[Singapore] 写真で十分?スタークルーズ

ご存じの方もいると思いますがスタークルーズという船のツアーがシンガポールから出ています。運営しているのは、シンガポールとマレーシアでカジノを運営するGentingという会社です。少し前にこのツアーに参加したことがあるのですが、そのときの様子をシェアしたいと思います。

船のツアーといっても、私が乗ったのは、どこにも寄港しないツアー。シンガポールから、二泊三日で洋上に出て、またシンガポール港に帰ってくるのです。なんのために、こんなツアーがあるかというと、カジノ目的のお客さんがターゲットです。公海に出るので、国の制約を受けずにカジノを運営できるということだと思います。Gentingとしては、セントーサのカジノもありますが、マレーシアのGenting(地名)のカジノや、このスタークルーズと組み合わせていろいろな形でのカジノを提供することで、グループとしてのファンを増やしていきたいという考えなのかと思います。

乗り場はハーバーフロントのショッピングモールVivo Cityと繋がっているのですが、建物内を歩いていくと、"Protect Your Family"。日本では見ない風景なので緊張感が高まります。


船内の風景。ホテルの廊下のようです。
























部屋に入ってテレビをつけるとカジノでの遊び方の説明。
























甲板の風景。


甲板のビュッフェコーナー。船は夕方出発なので、夕食どきで混みあっています。 食事する場所は船の中で4か所あり、中華スタイルのビュッフェ、洋食やインド系の食事のビュッフェが二か所、洋食のコース、それぞれ提供するレストランがありました。


そして船内を散策。カジノコーナーです。このようなマシン以外にも、ポーカー等対面型のギャンブルもありました。(見回した限り写真を撮ってはいけないとどこにも書いていませんでした。)
























そして、参加しているイスラム系の団体を指しているのだと思いますがカジノコーナーには入れないとの記載が。団体が自分達で貼っているのだと思います。


物販コーナー。シンガポールでは有名な明治製菓のハローパンダ。と懐かしのラッキー。これも明治製菓です。明治製菓は日本で販売しなくなったおかしも海外では売り続けているようです。
























船の甲板をぐるっと散策。非常用の小舟。


船内の広いスペースではいろいろなプログラムが組まれている。ステージ上でダンス教室に参加する人々。


















ツアー参加者は年配の方と、意外にも家族連れも多かったです。また、インドからの観光客らしき人も多くいて、インドからシンガポールに旅行できて、わざわざスタークルーズに参加しているようでした。夕暮れ時の甲板でも多くインド人家族グループを見ましたが、家族団らんを楽しんでいる様子でした。夕暮れ時の甲板はとても気持ちがよかったです。

全体としてこんな感じでした。2泊3日でこんな感じです。夜はパーティーが行われているような、そこではドレスコードがあるような「豪華客船」では決してなく、庶民の娯楽といった位置づけでした。私もそうでしたが、正直カジノ目的の方以外は、ちょっと退屈な感じに思ってしまうかなと思います。まだ参加されていない方が参加されてみて、この写真以上のものがあるかというと、うーん。二泊三日で旅するなら、東南アジアの他のところに行った方がいいかなと思います。それでも自分は行ったことないしという方は実際に行かれるか、行かれる場合はマラッカに寄港するものもあるのでそちらに参加されるのがいいかと思います。次はもっといいグレードの船に乗るぞ。

Monday, June 5, 2017

[Singapore] シンガポールのワーキングマザー達に思うこと

シンガポールで働いていると女性が活躍していると感じます。実際に女性労働力率は日本よりも高いです。下記のデータブックでも、日本で見られるようなM字カーブ(結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し,育児が落ち着いた時期に再び上昇すること)は見られません。グラフがちょっと見にくいですが。

データブック国際労働比較2015 (P53)
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2015/documents/Databook2015.pdf

2-5 年齢階級別女性労働力率(2013年)


結婚・出産を機に退職する人が少ないことが理由として考えられますが、その背景として、シンガポール政府が子育てをしながらの就業を奨励していることがあります。

シンガポール政府のワーキングマザーへの補助金に関するページ
https://www.ecitizen.gov.sg/Topics/Pages/Subsidies-for-infant-child-and-student-care.aspx

このウェブサイトでは、下記のように、ワーキングマザーが乳児を全日の保育園に預ける際には、月600 SGDの補助金が支給される(ワーキングマザーでない場合は150 SGD)こと、幼児の場合は月300の補助金が支給されること(ワーキングマザーでない場合は150SGD)が記載されています。





また、これは母親だけでなく、父親にも当てはまりますが、下記政府のウェブサイトに記載がありますが、7歳に満たないシンガポール国籍の子を持つ場合には、年に6日のChild Care休暇が与えられます。
http://www.mom.gov.sg/employment-practices/leave/childcare-leave/eligibility-and-entitlement

日本で有休を使わなければいけない場合に比べると休みが取りやすいと思います(シンガポールに来るとそもそも日本ではなぜ有休って取りにくかったんだっけと、シンガポール人が日本人に対して抱くのと同じように思ってしまう日本人も多いと思いますが)。

で、話はここからです。シンガポールは制度がしっかりしているから、日本もそうすればいいではないか、というほど単純ではありません。制度の上で、ワーキングマザー自体もかなり頑張っています。知り合いの例を下記に紹介したいと思います。


①多国籍 消費財メーカーで働くワーキングマザー
在宅勤務制度を利用している。会社に出社するのは月一度。在宅勤務しながら、生まれて数か月の子ども面倒を見る。仕事の合間合間でミルクを与えたり、おむつを交換したり。

②多国籍 IT機器メーカーで働くワーキングマザー
子どもは幼稚園に預け、会社に出社する。営業の最前線で働いており、顧客回りも多い。子供の幼稚園は午後4時には迎えに行く必要があるため午後3時にはオフィスを出る。午後9時に子どもが寝たあと夜中の12時まで自宅で業務を行う。

本人達も相当大変だと思います。そして、これらの例から会社も在宅勤務や、フレックスタイムを認めていることもわかります。

日本では「女性の社会進出」というけれど、要は女性もこういう働き方をする覚悟があるのか、男性も自ら率先して子育てに関わり負担を折半する覚悟があるのか、例えば女性がどうしても仕事を切り上げられなければ男性が仕事を切り上げて子供を迎えに行く覚悟があるのか、会社もよりフレキシブルな働き方やそのためのインフラを提示する準備があるのか、ということです。

本当にそのような社会になったら日本の居酒屋の売り上げも半分になると思います。この間日本出張に行ったときに、一次会が終わっていい感じに酔っぱらった様子の黒いスーツを着た数十人の男性の集団がすぐに帰らず二次会に行こうかどうしようかというような雰囲気でじゃれあっていました。シンガポールに来る前の自分だったら見慣れていたはずの風景でも、シンガポールでの生活に慣れた自分としては違和感を覚えました。本当に女性の社会進出を実現しようとすると、こういう風景は見られないことになります。社会通念のようなもの自体を変えていく必要があります。

会社も、在宅勤務やフレックスは管理上問題がある、と言っているばかりでは意味がありません。在宅勤務と仕事の質・量をどうやって両立をすべきかを考えるべきです。日本企業でもシンガポールでの多国籍企業でのワーキングマザーの働き方、企業の提供している働き方やそのインフラをベンチマークし、日本に輸入するような取り組みも有効かもしれません。

Sunday, June 4, 2017

[生き方] 人生におけるキャリアの積み上げ方

特に若手の人向けですが、今後どうやって自分のキャリアを積んでいったらいいのか、自分を差別化していったらいいのかという話です。自分も資格試験に挑戦したり、複数回転職したり、海外で働いたりといろいろキャリアについて考えながら行動しているなかで、考えていたことと近い言葉や実際に影響を受けた言葉を紹介したいと思います。


代々木ゼミナール(予備校)講師 荻野 暢也さん

https://to-manabi.com/words-support-yozemi
"もし未来を決める神様がいるとしたらそれは今のあなたです" 


http://shunnydepp.exblog.jp/131394/
"私達が日本人であることの最大の幸せは、自分で自分の人生が選べること、未来に起きることをあらかじめ自分で決められることだと思います。しかし、それは同時にとても厳しく、他の誰のせいにでもできないことでもあるのです。あなたが今、置かれているすべての現実は皆あなたが過去に選択した結果です。まずそれを心から認めなさい。そして努力しさえすれば夢を実現できる環境に感謝しなさい。すべてはそこから始まります。"


慶應義塾大学大学院特任准教授 ジョン・キムさん
プレジデント オンラインより
http://president.jp/articles/-/9417?page=2

1973年、韓国生まれ。日本に国費留学。英オックスフォード大学客員上席研究員、米ハーバード大学客員研究員を歴任。独自の哲学と生き方論が支持を集める。

”国や会社、専門領域など、世の中にはさまざまな境界が存在します。ただ、それらは人為的な分類にすぎません。人のつくった分類に順応して、その中で生き続けなければならない必然性はどこにもない。人生の指揮官は自分です。自分の意思で枠を飛び出していけばいい。”

”境界を越えた瞬間、強固に見えた境界線は消えてなくなります。後ろを振り返ると、自分の生きてきた軌跡だけが見える。そうやっていくつもの境界を越えることで、既存の分類
に属さない代替不能な自分というものができあがっていく。”

"自分の選択が生む将来的な結果に対する全責任を、自分で負う覚悟で下した選択は常に正しい"

堀江 貴文さん
ホリエモンが語る「100万分の1」の人材になる方法
http://weblog.horiemon.com/100blog/42876/

"今の時代を生き残るには、自分の価値、いわば〝時価総額〟を上げなければなりません。その方法はシンプルで、より『レア』な人材になればいいだけ。目標は100万人に1人の人材です"

"まず、対象や分野は何でもいいということを念頭に置いてください。そこで『100人の中で1番になる』ことを考えるとどうでしょう。頑張れば何とかなれるものが見つかるのではないでしょうか。その『100分の1』の要素を自分の中で3つ見つければいいんです。そして、3つを掛け合わせれば『100万分の1』になれます。"


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要は人生、選択の繰り返しであり、今の自分も自分自身の繰り返してきた選択の結果。自ら考え、選択をすることで、境界を越え、自らのテリトリを広げることができる。それにより、代替不能な自分を形作ることも可能、ということです。

例えば中小企業診断士の場合、診断士資格保有者は全国で20,000人程度いると言われています。中小企業診断士×グローバルでも、中小企業診断士同士の海外関係の研究会があったり、海外駐在経験のある商社OBもたくさんいたりと、それでもやはり厳しい世界です。さらに何が自分の差別化要素となるのかを考えなくてはなりません。

若手の人には、大学受験・就職活動を経て、会社に敷かれた今のレールの上を走っていくだけが人生ではなく、選択によって如何ようにも広がり、そしてそれが自身の差別化にもなることをわかってほしいです。そしてそれがこれからの世の中における生きていき方だと思います。実際に、自身が新卒入社した会社の後輩もキャリアについて悩んでいて相談にものりましたが、悩みぬいた末、ひとりは留学したのちネパールやアフリカで国際協力に携わり、もう一人はオランダでMBA課程に在籍しています。

100分の1を3つ見つけて100万分の1も難しいかもしれません。でも、10分の1を3つ見つけて1,000分の1でもいいと思います。その1,000分の1を自分の将来やりたいことと重ね合わせ、そして行動することが重要です。自分の場合はなんだろう、と考えてみてください。


それにしてもジョン・キムさん若いですね。負けていられないですね 笑。



[コンサルタントの働き方] 優秀なコンサルタントの特徴

優秀なコンサルタントの特徴について書きたいと思います。

①勝負強い
これは、運が強いとも言えます。ただ、何もせず運が強いのではなく、運を引き寄せているといえます。仕事に限ったことではありません。外資系コンサルティング会社時代、数十人のプロジェクトのボーリング大会で最も高いスコアを出したのは参加者の中で最もランクの高いパートナーだったし、同じプロジェクトメンバーの飲み会でじゃんけんをしたときもそのパートナーが勝った。また別の期末の飲み会でじゃんけんで勝った人がピコピコハンマーを持ち、負けた人がヘルメットを持ち、ハンマーで相手がヘルメットを被る前に相手の頭を叩けたら勝ち、というゲームをしたときも決勝に残ったのはパートナーとシニアマネージャーだった。彼らは常にどうしたら勝てるかというのを考えている。プロジェクトメンバーでフットサルをしたときも、試合のあと、彼らは得失点のきっかけになった場面を細かに覚えていて、あのときどうすべきだった、と真剣に議論する。何事にも頭をフル回転させることを止めず、愚直に向き合っている。カイジの漫画でティッシュ箱から当たりくじを引き当てるゲームがあったが、主人公は焦ってしまい、えいやでくじを引き勝負に敗れた。そして考えることを止めてしまったことを後悔する。クライアントが難しい課題に直面して明確な解にたどり着けず悩んでいるなか、コンサルタントがえいやになってしまったら、コンサルタントの価値は全くありません。常に1%でも成功確率の高い選択肢は何か考え続けることが必要です。彼らはそれを理解し、それが日常生活の基本的な行動様式にもなっているのです。

②記憶力が強い
クライアントとの打ち合わせでクライアントが話していたことをこと細かに記憶し、再現します。クライアントの現場の人と打ち合わせしたのち、クライアントの偉い人や、自社の上司から「どうだった?」と聞かれ、あの人がこんなことで悩んでいると言っていた、あの取り組みが現場でもうまく回っているといっていた、打ち合わせの結論としては…で、と簡潔に説明します。外資系コンサルティング会社でも「クライアントとの打ち合わせでは一字一句聞き漏らすな」と若手は言われていました。そもそも打ち合わせ内容を理解していなければ内容をメモするのも難しいでしょうし、打ち合わせ内容を理解してメモ・議事録を作成、記憶したりできるようになれば、その次の手をどう打つべきか等のクライアントとの議論も主導できるようになります。コンサルティング会社では若手はこの過程を通して育っていきます。「会議が眠い」と感じている若手とは成長度合いが全く違います。

③簡潔にまとめる
記憶力に加え、さらに優秀なコンサルタントは簡潔にまとめるのも得意としています。「どうだった」と聞かれたら、結論は①…、②…、③…で、次のアクションは①…で、②…で、③…で、と簡潔にまとめることができます。これはどうやって対応したらいいかというと、クライアントとの打ち合わせが終わって、自社の事務所に戻る道で結論は①…、②…と、答えられる準備をするのです。さらに、コンサルタント、マネージャークラスになると、クライアントとの打ち合わせの場で最後に、「じゃあ、コンサルタント会社さん、まとめると?」と話しを振られることもあるので、リアルタイムで結論は①…、②…、と答えられるように頭を働かしておかなければなりません。当時の優秀な上司は数十人のクライアントのメンバーが参加した打ち合わせをファシリテートしつつ、手元のメモに、議論で出た重要な論点、結論等をいつでも答えられるようメモしていました。コンサルタントって、結論は3つで…と、どうやっていきなりそれが出てくるんだろうと思うかもしれませんが、上記のようにちょっとした打ち合わせの間、打ち合わせの中での間を使って重要なポイントって何なのかというのを常に考えています。

④根性
自分の詳しくない分野で会っても猛勉強して議論にはついていけるようにする、クライアントがあきらめてしまいそうな答えのなさそうな状況でももうひと頑張り考えて自分なりの答えを出す、クライアントに怒られてもなにくそと期待を上回るものを出す等々。お客さんが突き抜けられないブレークスルーするのがコンサルタントなのでここに喜びを感じて、頑張れることが重要です。このあたりは激務と呼ばれる原因でもあるのですが、激務になり過ぎない範囲で上司や周囲の知恵を借りながら効率よく対応していけばいいのではと思います。

思いつくのはこれくらいでしょうか。決して、コンサルタントってすごいでしょう、ということを言っているわけではなく、①も②も③も、もちろん④も日ごろの努力とか、行動様式とか、から養える能力です。万人が何もせずにコンサルタントになれるとは思っていませんが、万人であっても上記のような努力を日頃からしていればコンサルタントとしてクライアントを満足させるレベルになることは私の経験からも可能だと思っています。よく地頭が良い人がコンサルタントに向いていると言われますが、①~③これらができていれば、字頭が良いとなぜか言われるようになります。経営コンサルタントになろうと考えている若手の方、中小企業診断士として独立しようと考えられている方の参考になればと思います。

Wednesday, May 17, 2017

[Blog] Google Analyticsとブログのポジショニング

本ブログですが、Google Analyticsと連携させています。どのようなキーワード検索を使って本ブログにたどり着いているのか、見るためです。とはいえ、理由はわからないのですがアクセス全体の10%くらいのみしか拾えていないようで、総アクセス数の内訳まではつかめていないのですが、全体の傾向は把握できます。

下記が直近2年分くらいのデータを拾って、検索キーワードを大まかに分類・集計したものです。大まかにというのは、キーワードそのものずばりを集計したものではなく、表現の揺れやタイプミス等は修正したうえで、それを大分類でくくったものです。こういう作業は地道な作業ですが、コンサルタントは仕事でよくやります(笑)


シンガポールの大分類では、最も多いのがシングリッシュ。LINEのシンガポール限定無料スタンプをみて、検索してくる方が多いです。次にシンガポールの料理学校・教室や、日本のシンガポール料理屋全体や特定のお店について。LINEのスタンプで使われているシングリッシュについては、最も検索が多かったのが"swee"、次に多かったのが"pang gang loh"でした。このあたりが日本人にとっては最もわかりにくい、ということなのでしょうか。このブログを見て知った方は他の日本人に自慢してあげましょう。

[Singapore] LINEスタンプから学ぶシングリッシュ (1/2)
http://live-in-asia.blogspot.sg/2015/04/singapore-line-12.html

[Singapore] LINEスタンプから学ぶシングリッシュ (2/2)
http://live-in-asia.blogspot.sg/2015/04/singapore-line-22.html

赤色で示した現地採用、転職といったキーワードについては、グローバルにキャリアを広げていきたいと思っている方の目にこのブログ自体が触れることができたので、よかったです。そういった方には参考になる情報を今後も発信していければと思っています。

黄色で示したSINGA、リー・クンチョイについては、シンガポールを知ったばかりの人、なんとなく流行っているからシンガポールを調べてみた、という方からすると、何層もディープなシンガポールですが、こういった方にも訪問してもらえるのはとてもうれしいです。

SINGA(ライオンのシンガ)について
[Singapore] 建国50年記念LINEスタンプから学ぶシンガポール文化  ※下記記事最後部分参照
http://live-in-asia.blogspot.sg/2015/05/singapore-50line.html

リー・クンチョイ氏について
[Singapore] Lee Khoon Choy(リー・クーンチョイ)氏とは
http://live-in-asia.blogspot.sg/2016/02/singapore-lee-khoon-choy.html

中小企業診断士の大分類では、養成課程の入り方や費用等について、MBAとの違い・比較について等が最も多いです。ここで言いたかったのは本当に診断士になりたかったら手段は選ぶな、中小企業診断士とMBAは「箔が付くから」とひとくくりにせずその先に何がしたいかを考えてから決めろ、ということでした。また、赤色で示したように、中小企業診断士×海外や中小企業診断士×国際協力といったテーマでも検索してくる方も相当数いて、上記の赤色部分同様ここは大切にしたい層です。

理由は、シンガポールの大分類の赤色の部分と同じですが、転職や資格等の壁を越えながら、さらに海外に足を踏み出そうとしている若手の方の道しるべになるのではないかと思うからです。こういったパワーが日本を強くしていくのだと思っています。

生き抜き方と題した大分類では、議論の主導権の握り方、仕事の主導権の握り方、会社の主導権の握り方というのがありました。その検索でだどりついたのは下記記事です。

[コンサルタントの働き方] 議論の主導権の握り方
http://live-in-asia.blogspot.sg/2015/05/blog-post_47.html

同じ方法をとることで、議論のみならず仕事の主導権を握ることも可能です。若手の方はこれで、上司の仕事を奪ってみてください。ただ、会社の主導権の握り方はもっと複雑な話なので、現時点では他のブログを参考にした方がいいと思います(笑)。人前の挨拶もそうですが、こういった検索キーワードは、目の前にコントロールしにくい上司がいるとか、大勢の前であいさつしなければいけないとか、急に話を振られる機会が多いとか、目の前になんとか乗り越えたい壁があり、その結果検索するものなので、こういった思いには自身の経験をシェアすることで最大限応えていきたいです。一部の天才にはかないませんが、こういうちょっとした工夫・努力である程度のところまではいけると思っています。このあたりが、生き抜き方の大分類共通での言いたいことです。

このブログ自体も、Live in Asiaという名前のとおり、①アジアを舞台に、②生きる(なんとかして生き抜いていく)という視点で、ほとんどの記事が①か②のどちらか、または①と②の両方を切り口に書いています。その両方の観点から今まで考えたこと等をシェアしていき、①で興味を持った人が②にも興味を持ったり、その逆だったり、ひいては①②を同時に体現する人が多く出てくるといいな、その役に立てばいいなと思っています。私自身もその流れの中にいる一人です。というのがこのブログのポジショニングです。

検索キーワードの番外編として、下記のようなものもありました。

「断捨離 卒アル類」
⇒ここまでのレベルに達したらそれ以上は断捨離しなくてもいいのではと思います。なぜらな卒アルにたどり着くまえに、本とか衣類とか小物とかはもう手を付けていて、最後の最後に卒アルにたどり着くと思うので。卒アル類くらいは残してもいいと思います。

「かんげいかいなのにふられなかったら」
⇒そもそもそんな状況あるのでしょうか。それは表向きは歓迎会であっても、実際には周りの人はただ会社の経費で飲み食いできる、と思っていただけなのではないでしょういか。自分が主役なのに振られなかったらどうしたらいいのか、それでも自ら一言言える積極さが欲しいですね。

Sunday, May 14, 2017

[中小企業診断士] 海外在住診断士が資格更新するには

久々に中小企業診断士関連の話題。
中小企業診断士資格は一度取ったら何もしなくてもずっと保有していられる資格ではありません。5年ごとに一定の知識や経験を積み続けていることを示す必要があります。

詳細は以下、中小企業庁ウェブサイトより

~~~
1.更新登録をするためには、登録の有効期間内に「新たな知識 の補充」と「実務の従事」の2つの要件を両方とも満たしてい ることが必要です。

(1)「新たな知識の補充」として、次のいずれかを5回以上行 っていること
a.経済産業大臣が登録した機関が行う理論政策更新研修受講
b.中小企業基盤整備機構(中小企業大学校)が行う理論政策 研修の受講
c.経済産業大臣が登録した機関が行う論文審査に合格
d.上記 a.又は b.の研修の1回の日程を通じた指導

【参考:理論政策更新研修機関(平成27年1月31日現在)】
(一社)中小企業診断協会 URL:http://www.j-smeca.jp/
(株)実践クオリティシステムズ URL:http://www.jqs.jp
(株)経営教育総合研究所 URL:http://www.keieikyouiku.co.jp
(株)あきない総合研究所 URL:http://www.akinaisouken.jp/
(協)さいたま総合研究所 URL:http://ss-riroken.jp/

(2)「実務の従事」として次に掲げる業務等のいずれかを行う ことにより、その合計点30日(再開後の最初に行う更新登 録の場合は15日)以上獲得していること
a.都道府県等支援センター等が行う中小企業に対する経営診 断・助言業務又は窓口相談業務に従事。
b.中小企業に対する経営診断・助言業務に従事等。
~~~

で、海外で生活する中小企業診断士にとってネックになるのが(1)「新たな知識の補充」です。仕事や自己研鑽で日々新たな知識を補充しているという方も多いと思いますが、指定された機関で講習(=理論政策更新研修)を受け、それの参加した証明書を以て条件を満たしていることを示さなくてはなりません。

なぜ、こちらがネックになるかというと、自身が海外におり、「新たな知識の補充」を行うための講習に出ることができないからです。ちょうど出張などで、日本に帰る際に講習を入れられればいいですが、出張日程は自分の意図通りに調整するのは難しいですし、日程が変更になることも少なくないと思います。また、この4時間くらいの講習のためにわざわざ一時帰国するのは時間も費用ももったいないと思います。

(2)「実務の従事」に関しては、これは海外にいることを言い訳にはできません。独立診断士であれば、顧客が日本の中小企業であれば顧客にお願いして「実務の従事」をした旨を所定の書式に記載してもらえばよいですし、そうでなければ、もしくは大部分であろう企業内診断士であっても、日本の中小企業の経営者(知り合いで独立した人でもよい)と、スカイプ・メール等を活用し、遠隔でコンサルティングを提供、それを以て書式に記載してもらえればよいです。それさえも難しい場合はまさに保有しているだけの資格になってしまいます。知り合いの会社や知り合いのつてをたどってでもサポート対象の会社を見つけ、実務を行っておきましょう。

「新たな知識の補充」の話に戻りますが、講習もオンライン講習や、スカイプ等でリモート参加できたらいいのですが、そういったものはありません。ITの発展に伴いその場にいなくてもかなりのコミュニケーションができてしまう今の世の中においてこれは不便極まりないです。実際には本人確認がどうだとかいろいろ事情があるのだと思いますが、それも含めてどうしたら便利になるのか考えてほしいです。一般企業はテレビ会議やビジネススカイプ等を活用してグローバルにコミュニケーションをとったり、出張費を極力かけないようにしているのですから、運営側もそういった感覚に追いついてほしいです。自らの経験上、本当にその場で参加しなければならないのはホワイトボードに向かって侃侃諤諤議論するような場合のみです。診断協会の提供する理論政策更新研修に参加したことがありますが、大教室で講師が淡々と4時間話しているだけ、また参加者も聞いていない人が多かったです。求められるレベルがそれでいいのであればまさにウェブ講習で十分だと思います。あきない総合研究所の講習に参加したこともありますが、そちらは参加者同士で議論を行う場もあり、その場で参加している意味もあると感じていました。「知識の補充」としてそのレベルが求められるなら、必ずその場で参加しなくてはならないとするのも理解できる部分もありますし、そうでないなら、ウェブ講義で十分です。

で、実際にはどうするかというと、理論政策更新研修以外にも、「c.経済産業大臣が登録した機関が行う論文審査に合格 」というのがあります。論文審査であれば、日本にいなくても、論文を作成し送ることで、審査を受けることができます。実は上記の中小企業庁のウェブサイトに記載されていた、理論政策更新研修機関では、論文審査も行っているところがあります。具体的には下記です。

(一社)中小企業診断協会 URL:http://www.j-smeca.jp/
(株)実践クオリティシステムズ URL:http://www.jqs.jp
(株)経営教育総合研究所 URL:http://www.keieikyouiku.co.jp
(株)あきない総合研究所 URL:http://www.akinaisouken.jp/

それぞれ、紹介していきますと、

(一社)中小企業診断協会
http://www.j-smeca.jp/contents/006_about_koushinriron.html
費用:6,000円(別途各都道府県の診断協会入会金や年会費(東京は50,000円)が必要)
論文テーマ:
   1.必修テーマ「新しい中小企業政策の動向」
   2.選択テーマ「最近の診断に関する理論及びその応用」 
      次の(1)、(2)のいずれか1つを選択
       (1)「サービス業の生産性向上支援」
       (2)「6次産業化支援」

(株)実践クオリティシステムズ
論文テーマ:
 (必修)  中小企業を取り巻く経営環境(中小企業白書)
 (一つを選択)
      製造業のコンサルティング
      あなたの知恵からイノベーションを~コンサルタントリテラシー~
      小規模事業者のコンサルティング

ちなみに、「以下のような方にお勧めです。」とのこと。

多忙で研修を受ける時間が無い:15日間の中で課題を解答すれば良いため、わざわざ会場に来て時間を拘束されることもなく、何時でも好きな時に、まとまった時間が取れなくても受講可能です。
研修会場が遠い、海外で勤務している:web環境があれば日本全国、または海外でも受講が出来るため様々な事情で会場に来る事が困難な方でも理論ポイントを取得することが出来ます。
議論が苦手・自分のペースで考えたい:1人で解答を作成するため、課題に対してゆっくりと考える事が出来ます。

上の二つはいいですが、診断士は顧客と議論しながら顧客を導いていくので、「議論が苦手」とは言ってほしくないですね。苦手ならそれを克服するべく、むしろ議論をしなければならない研修に参加するべきだと思います。

(株)経営教育総合研究所
http://www.riron.jp/ronbun.html
費用:10,800円
論文テーマ:「ご入金の確認後、下記【論文審査スケジュール・お申込】の【論題資料の送信日】より、「受講案内(合否判定基準等)」と「論題資料」をeメールで送信します。論文審査のテーマは2題です。 」とのことで、ウェブサイト上ではテーマは記載されていませんでした。

(株)あきない総合研究所
https://www.koushinkenshu.com/ronbun/
費用:10,000円
論文テーマ:
【1】.必修テーマ 「最新の中小企業政策の動向について」
【2】.選択テーマ 次の(1)、(2)のいずれかひとつを選択
    (1)「小規模基本法の趣旨を踏まえ、その政策的課題を述べよ」
    (2)「中小企業の海外展開の現状と課題」

と、必修テーマは各機関似ていますが、選択テーマはそれぞれ異なっていますね。管轄の中小企業庁がテーマを割り振っているのか、中小企業庁の提示したテーマの候補の中から選んでいるのか、各機関が独自にテーマを考えているのかはわかりませんが、これらのテーマで論文を作成、各機関に提出し、内容が認められれば「新たな知識の補充」の1回としてカウントされる証書がもらえます。

全ての機関の論文審査を受けたわけではないので、どれがいい等現時点では言えませんが、複数の機関を試してみて、感じたことがあればまたシェアできればと思います。海外在住の診断士の方々は論文審査で「新たな知識の補充」要件をクリアして資格を維持していきましょう!

Thursday, May 11, 2017

[Cambodia] プノンペンのチャイナタウン

カンボジア、プノンペンのチャイナタウンについて。ここにもチャイナタウンはあります。ただ、横浜、神戸、長崎やサンフランシスコのようにここからチャイナタウンだ、という門(中国語で"牌楼" / 普通話での発音はPai(2) lou(2))があるわけでもなく、じわじわとそれらしくなっていくような感じです。チャイナタウンとは、中華系移民がある程度固まって居住している地域のことですが、前者は観光地化されたチャイナタウンであり、後者は観光地化されていないチャイナタウンです。後者は自らチャイナタウンだと宣言しているわけではないので、それらしさを感じ取るしかありません。

チャイナタウンの風景。敷地ぎりぎりに建物が建つ東南アジアでよく見る雰囲気の路地。

チャイナタウンとわかるポイント。①看板のクメール語の下に中国語。"鑽石店栈(ダイヤモンド ゲストハウス、の意味)"と書いてある。店の看板については、"外国語表記の看板には必ず 上方にクメール語を併記し,字体もその他文字 の2倍大にするよう一律に規定"されているそうだ(※本記事の最後に記した参考文献を参照)。②店や家の門の両脇には新年の飾り"春联" / Chun(1) Lian(2)。

路地を歩いているとこんな感じ。チャイナタウンとわかるポイント③中華式神棚。よーく見ると、建物の2階の外側に中華式の神棚がある。この写真ではわからないが、一階の店舗の奥に中華式の"土地公"という神様を祭った祭壇が置かれているところも多い。

これもチャイナタウン。近辺をうろうろ。束なった電線のボリュームがベトナムと似ている。

そして、これが潮州会館。東南アジアのチャイナタウンに共通していることだが、華僑がやってきた当時、華僑はその国にとっては外国人であり、現地政府の保護などが十分に受けられる状況ではなかった。そのため、華僑同士が同じ出身地、姓、職業などで互助会を作り、資金を貸し合ったり、医療費を援助し合ったり、新聞を発行したり、学校を作ったりした。その最も大きなものが同じ出身地の華僑同士で構成される○○(中国の地域名が入る)会館だ。下の写真左上から時計回りに①~④とすると、①潮州会館の敷地への入り口、入ると奥には会館というより寺院と表現した方が的確な建物が見える。②敷地内には獅子舞用の足場。③寺院(道教寺院)の入り口には"潮州会館"の文字。寺の中庭のスペースではテーブルが置かれていて、そこでは子供が宿題をやっていたり、大人が伝票のようなものを見ながら何かの勘定しているようだった。④潮州会館の裏手に回ると、実はこの潮州会館と、"瑞華学校"という中華系の学校が背中合わせで位置していることがわかる。つまり、華僑は会館を構築すると同時に、そこに先祖やその出身地域で信仰されている神様を祭る寺院、会員への教育を行う学校を構築していたことがわかる。これらが華僑がその国で生きていくためのいわばインフラとなっていた。

カンボジアの華僑は、タイと同じく潮州系の人が多いそうだ。下の左の写真は、潮州会館の入り口の右側の壁なのだが、ここには1993年にこの潮州会館が再建されたこと、その再建の発起人の名前が記載されている。ポル・ポト政権での反体制はへの迫害やその後の内戦で破壊されてしまったのだろうと察する。発起人の一番右上に書かれている楊啓秋という人は関連の文献(※本記事の最後を参照)によると、右の写真のカンボジア王国華人理事総会の会長(2001年時点)のようだ。ちなみにカンボジア王国華人理事総会の建物はシャッターが占められており常時使用されているわけではないようだ。

これは、福建会館。同じく左上から時計回りに①~④とする。①福建会館の門。②福建会館。これも会館といっても寺院そのものだ。なかに入ると、管理人らしき老人が「お参りするか」と普通話の中国語で声をかけてきた。「これは関帝」、「これは関帝の息子」、「これは媽祖」、「これは関帝の馬」等お参りすべき像についてひとつひとつ丁寧に説明をしてくれた。③福建会館も"民生中学"という学校が併設されている。写真のように学校名の書かれた門はあるのだが、門は閉まっており、学校から下校していた生徒たちは①の福建会館の門を通っていた。"民生"という名前から、台湾人の支援を受けて再建された等、台湾とも何らかの関係があると思われる。④学校の送り迎えバス。

民生中学 学生の行動規範。クメール語と中国語の併記。

台湾の寺院でよくあるタイプの提灯のぶら下げ方。

ちなみに、下が以前台湾で撮った鹿港という古い街の寺院の写真。この提灯のぶら下げ方が台湾からの支援があったとしてそれに関連するものなのか、むしろもともと中国南部ではこの方法がメジャーな方法でそれが台湾や東南アジア華僑も踏襲されたのかは、わからない。詳しい人がいたら聞いてみたいが。


カンボジアのチャイナタウンについては、下記が詳しいです。すべて同じ方の著作!ものすごい量のフィールドワーク!

カンボジアの華人社会 - プノンペンにおける僑生華人および新客華僑集住区域に関する現地調査報告 - 野澤 知弘

カンボジアの華人社会 - 僑生華人と新客華僑の共生関係 -  野澤 知弘

カンボジアの華人社会 - 華語教育の再興と発展 - 野澤 知弘

どこかの国のチャイナタウンを訪問される際は、そこについて少し調べて行かれるとより楽しめるかと思います。シンガポールにある程度住んでいる方なら、潮州系、福建系等の意味もわかると思いますし、シンガポールでチャイナタウンを訪問したり、華人経営の料理店や、華人の友人の家を訪問して感じたことと比較して、どんな共通点/違いがあるか考えてみるのも楽しいと思います。またこの記事を通して、シンガポールに数多く存在する"○○会館"の前を通った時に会館の役割について思い出したり、この○○は中国のどこだろう、などと考えてもらえればと思います。

Friday, May 5, 2017

[Cambodia] カンボジアの風景

カンボジア、首都プノンペンにて。

ところどころ大きな公園があったり、政府関係とみられる建物は高い塀で囲われていたりと、街の雰囲気がベトナムに似ている気がして、カンボジアも社会主義なのか、と思いましたが資本主義でした。その後調べながら考えているなかで、1954年までカンボジアを植民地としていたフランスの影響なのか、それとも1978年のベトナム軍侵攻、それによりポル・ポト政権に代わり樹立された社会主義のヘン・サムリン政権の影響なのか、と思いました。

自国民の大虐殺を行ったポル・ポト政権は親中でありその影響で共産主義的な建物の風合が似たのかとも思いましたが、ポル・ポト政権は1976年1月~1979年1月のみで、また国内はそれどころの状況ではなかったと思います。同時に、たった3年であれほどの大虐殺が行われてしまうとは大変恐ろしいことだと思います。

カンボジアはその後、1991年のパリ和平協定、1992年の国連カンボジア暫定機構(UNTAC)による暫定統治、1992~1993年の日本のPKO派遣、1993年の第一回総選挙を経て、王政を復活させています。(※)
※外務省ウェブサイト「カンボジア総選挙 民主化に向けた日本の支援」より

メコン川は川幅が広いため橋が架かっておらず、渡し船が人や車を載せて両岸を往復。

同じくメコン川、首都プノンペン近くの川岸には水上集落も見受けられた。

市内にあるマーケット。門の上に旗がついているのがベトナムと似ている。

別のウェットマーケットにて。


















市内のガソリンスタンド。日本同様のガソリンスタンドもあるが、このスタイルではバイクへの給油・支払いが一瞬で完了した。
























プノンペン市内にて。お寺への入り口と思われる門とオレンジの袈裟を着た僧侶。
























市内の橋の欄干にはインドに起源をもつ7つの頭を持つ蛇の神、ナーガ。

プノンペン市内の寺院、ワット・プノンにて。角に獅子が鎮座しているなど、学生時代に中国雲南省、シーサンパンナ・タイ族自治州、景洪市で見た仏塔と似ていると思った。

参考ですが、下記がだいぶ前にその中国の景洪市で撮った写真。
























ちなみに、インターネットで調べた範囲ではタイではこのスタイルはあまり見られませんでした。中国でみたものも、カンボジア~(ラオス)~中国南部で繋がる文化的なラインがあってそれと関係があるのかどうなのか、時間があれば調べてみたいです。

あまり事前知識を持たないでのプノンペン訪問でしたが、ベトナムと似た街の雰囲気、タイに似た文字や寺院、中国南部と似た仏塔、今回は訪問できませんでしたがヒンドゥー教の寺院であるアンコールワット等、いろいろな文化と繋がりを持ってきたカンボジア。出張で東南アジアの都市を訪問するたびに、バンコクとか、ジャカルタとか、ホーチミンとか、車・バイクの洪水に慣れていた自分にとっては、そうでない、のんびりした雰囲気を楽しむことができました。カンボジアも数年したら他の都市と同じようになってしまうのか、数年後また訪問してみたいと思います。