Sunday, June 28, 2015

[中小企業診断士] 診断士養成課程は選択肢となり得るか

中小企業診断士になるには、通常の一次試験・二次試験に合格する以外に、一次試験合格後に中小企業診断士養成課程を受験し修了することで資格を取得する方法があります。

中小企業診断士養成課程とは、国の中小企業基盤整備機構が運営している中小企業大学校に設置されているものや、その他私設の教育機関や大学院に設置され経済産業大臣に登録されたものがあります。一覧は、下記中小企業庁のウェブサイトに公開されています。
http://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/download/0417Yousei-TourokuKikan.pdf

中小企業大学校のようにフルタイムで半年間のもの、平日の夜や週末を使い、1~2年かけて終了するもの、大学院のMBA課程と一緒になっていて卒業時にはMBAと診断士資格が同時に手に入るものなど、それぞれあります。

診断士養成課程は選択肢となり得るか、結論からいうと、資格取得を目標としている人には選択肢となり得ると思います。その理由を自身が中小企業大学校の養成課程の道を選び、学んだ経験を踏まえ下記にまとめてみました。

1.足踏み感が少なからずある二次試験の勉強をし続けなくてよい
私は二次試験を一度受け、それなりに勉強したつもりだったのですが、あと少しで通過に至りませんでした。一次試験と違い勉強を通して自身が一歩一歩成長している感覚や合格に近づいている感覚のない、また次回必ず受かるかわからない二次試験に対し、あと少しの差分を埋めるためだけにもう一年予備校に通ったりして勉強するのは投入する時間に対する効果(自身の成長度合×資格取得の確実性)がとても低いと思いました。仮に二次試験の勉強を一年続けると足踏み感が強くもどかしい思いをすることが容易に想像できました。更には二回目を受けて仮に不合格であったら、一次試験から受け直しになってしまいます。中小企業診断士養成課程であれば、入学が決まればあとは歯を食いしばって最後までついてけば資格は取得できる、また二次試験の勉強に比べ、一日一日学ぶこと自体も自分のためになる、養成課程での学習を通した自身の成長度合、資格取得の確実性の両面から養成課程が自分にとっては良さそうだと思いました。その分、養成課程の準備以外の時間は英語の学校に通うなど時間を有効に使用することを心がけました(結果的にこれでTOEICの点数も上がり転職にもプラスになりました)。

上記の1番が、自分にとっての養成課程を選択した最も大きな要因だったのですが、実際に養成課程で学ぶなかで、感じたのは下記2点です。

2.まとまった時間を使って考える・議論する、そこで成長するよい機会となる
以前自身が事業会社で勤務していたときは、会社や部署をよりよくするためにどうしたらいいのか等、同僚と納得いくまで議論したいとは思いつつも、通常業務が忙しく、なかなか思うようにできていませんでした。中小企業大学校の養成課程では、一部座学もあるものの、大部分がケーススタディに基づいたディスカッション・グループワークであったり、実際に中小企業を訪問してのコンサルティングプロジェクト形式の実習であったり、まさに題材となっている会社をどう良くするかを議論することがメインでした。ホワイトボードに向かい、侃侃諤諤議論します。時には指導教員に反論したりします。議論が詰まってしまい、誰も打開策を打ち出せないときには、誰かがいい意見を言ってくれるのを待たず、「ここで状況を打開するのは自分なんだ、自分なんだ。。。」と常に考え、積極的に発言・議論を導くようにしていました。今考えると、その時の経験があったことが、養成課程修了後入社した外資系コンサルティング会社の経営コンサルティング部隊で生き残ることができた要因だと思っています。その会社では入社時の最終面接でパートナーに「コンサルティング会社で働くのに中小企業大学校に行かずに直接来れば早かったのに」と言われましたが、自分としては養成課程での経験がなければ、入社早期から議論のなかでプレゼンスを発揮するのがなかなか難しかったのではと思っています。

3.養成課程参加者同士の強いコネクションができる
自身の通っていた中小企業大学校の養成課程では、さすが公的機関、クラスメートの8割以上が日本全国の中小企業支援機関、行政の中小企業支援部門、金融機関から派遣されている人でした。私は残りの1~2割に滑り込んだ形です。その人達と濃密な半年間を過ごし、全国にて中小企業支援を仕事として行っている人達との強いコネクションを築くことができました。自分のコンサルタントとしての成長次第ですが、将来セミナー等に講師として呼んでもらったりもできるかもしれません。2に関連するところでは、中小企業支援のための支援策の適用を認可する行政側、中小企業に融資する金融機関等、様々な立場で中小企業支援に関わる人たちと議論するなかで、それぞれの考え方に触れることができたのも経験値としてよかったと思っています。聞きたいことがあれば今でも連絡して聞くこともできます。中小企業大学校以外では、参加者の構成がどのようになっているかはその人のブログを探し出したりしてチェックしてみるといいかもしれません。


と、いい面ばかりを挙げましたが、もちろん養成課程に要する時間や費用についても考える必要はあります。自分の場合は、①診断士資格を取得することが自分の計画における目標のうちのひとつでありそれを最優先したこと(確実性 = お金に変えられない価値を重視)、②また資格取得後コンサルティング業界へ転職しようと考えていたため退職には抵抗がなかったこと(資格取得後思い通りの仕事にありつけるかはわからなかったが、何となく自信はあった)、③また養成課程期間中に収入が得られない機会損失はあるものの当時独身であったたことから支えられなくなるキャッシュアウトフローが特になかったこと、の①~③から、自分にとってはフルタイムの養成課程に入るデメリットは大きくないと判断しました。家計の維持のために、仕事をしていない期間ができてはいけない人であれば、現職を退職せずに平日夜や週末の養成課程などがありますので、それも選択肢となるとは思います。また、③は許容可能だが、②は養成課程後思うように仕事が見つからなかった場合のリスクを考えると抵抗があるという方は、平日夜や週末の養成課程以外に、会社と交渉して休職しフルタイムの養成課程に入る選択肢も考えられると思います。実際には、私の同期の個人で参加していた人も養成課程終了後中小企業支援機関に就職したり、独立して生計を立てたりしているので、やり抜く意志さえあれば心配しすぎる必要はないとは思います。

ウェブ上では、養成課程についていろいろ否定的な意見も書かれていたりしますが、一切気にする必要はありません。診断士になれば、誰がどの出身だとか一切関係ないですし、気にする人もいません。どれだけ仕事を取ってきて、確実に実施できるかが勝負です。本当になりたいのに二次試験を経ての資格取得にこだわっていて結局機会を逃してしまっては本末転倒です。コンサルティングプロジェクトにも言えることですが、目的を達成するためにはあらゆる手段を考えるというマインドで考え、判断頂ければと思います。歯を食いしばって臨めば、むしろ即戦力として次の道へ繋がるものだと思っていますので、打算的に活用してください。

Wednesday, June 10, 2015

[中小企業診断士] 診断士とMBAのどちらを取得すべきか

今後のキャリアアップのために、中小企業診断士とMBAのどちらを取得すべきか。答えは当たり前ですが「その人による」です。それぞれ特徴があり、自分の人生にとって必要なのは何によって得られる要素なのか、それに時間やお金をかけて取り組む価値があるかを考えるべきです。

まずは中小企業診断士の特徴は、
1.学習を通して得た知識を活かして仕事の幅を広げられる
今まで特定の分野で仕事をしていた人が、経営に関する基礎的な知識を一次試験の7科目の学習を通して身に着けることができます。それにより、例えば財務会計の科目で学んだことを活かして取引先の財務諸表を見たり、経営情報システムでの知識を活かしてシステム改善のプロジェクトに参加したり(当然最初は参加者のひとりという位置づけ)、経営法務で学んだ知識をベースに取引先との契約内容すり合わせをしたりと、資格取得に至るかは別として、真剣に取り組めば少なからず上記のような職場に転がっている機会を掴み、仕事の範囲を広げられる可能性はあると思います。仕事の範囲を広げ、社内での希望の部門への異動や転職に繋げられれば時間やお金をかけて勉強した価値は十分あるし、逆に勉強だけして満足していたら時間とお金の無駄です。ただ、経済学は、私も苦手な科目のひとつでしたが、自身の経験上勤務した事業会社、外資・日系のコンサルティング会社での勤務で知識が役に立つ機会はありませんでしたので、必ずしも全て同様に自身の仕事に役立つとは言えない部分もあるとは思います。

2.公的な機関から中小企業支援の仕事を得やすくなる
今度は診断士として開業して仕事をする場合ですが、よくネット上で言われているのが、公的資格とはいえ、弁護士、会計士、税理士等と違って法的な独占業務がないため、努力して取っても意味がない、それだけでは食っていけない等です。確かに、中小企業診断士の資格を持った人だけに開放された一定の市場があるわけではありません。一方で、商工会・商工会議所等の中小企業支援機関、地方自治体等において専門家による経営相談や専門家を企業に派遣する中小企業支援施策が用意されていますが、その専門家募集のページでは、「中小企業診断士資格を保有していることが望ましい」と記載されていることも多いです。中小企業診断士資格の有無に関わらず経営コンサルタントを名乗りそういった経営の助言を行う業務を行うことはできますし、実際に既にどこの地方自治体で○○アドバイザーをしているといった経歴がよりものをいうことは確かですが、一番最初に仕事を取る際には資格があった方が有利といえると思います。支援機関や地方自治体でも、その看板を背負った経営相談員や派遣される専門家の一定レベルの質を担保しなくてはなりませんし、その判断のよりどころになるものだと思います。

3.国際協力の分野での活躍も期待できる
また、あまり知られていませんが、国際協力の分野で、日本のODAを財源とした、JICAやHIDA(一般財団法人海外産業人材育成協会)等の活動のなかで、海外の中小企業産業振興や中小企業人材育成を目的としたものも多くあり、そこでの活躍の機会も考えられます。JICAやHIDAはタイやインドネシアで中小企業診断士の育成を行っており、そこでも日本の中小企業診断士が活躍していました。また、JICAが2012年から開始した、日本の中小企業の海外進出を支援し、それを以て進出先国の経済発展・人材育成に寄与するという「中小企業海外展開支援事業」においても、中小企業診断士の活躍の機会は多いと思います。海外の大学院で開発学を専攻し国際協力の分野に関わる人も多いですが、中小企業診断士資格の取得も国際協力に関わりたい人にとっての入口のひとつになると思います。国際協力機関で働く人は支援先国との調整役となることが多いと思いますが、診断士は現場で現地の人に根気よく指導する立場を期待されることも多く、より現場に近い場所で関わりたい人には理想的とも言えると思います。下記リンクのように中小企業診断士の経験を活かして、国際協力に携わって本を出版されている方もいます。
元JICA専門家 中小企業診断士 298日間の海外支援奮闘記
中小企業診断士による国際協力の機会についてはあまり知られていないことですが、これを知って診断士を目指し、国際協力の分野で活躍する若手が多く出てくるといいなと思っています。

4.診断士同士の横の繋がりができる
参加するしないは自由ですが、中小企業診断協会という診断士が集まる協会もあります。様々な研究会活動があり、診断士同士の横の繋がりができます。自身の経験上、いわゆる大企業で幹部として働いている人、働いていた人も多く、そういった会社の話を聞けたり、そういった人と一緒に仕事をすることでその人のコネクションが仕事に生きることもあると思います。

一方、MBAについては、私自身が取得しているわけではないので、人から聞いた話として簡単に紹介するにとどまってしまいますが、
1.英語での経営に関する議論ができるようになる
海外MBAの場合、授業は全て英語で、様々なケーススタディを通してクラスメートとの議論も行うことになりますので、必死に頑張れば卒業する頃には初めて訪問した海外の会社などとも英語で経営のハイレベルな議論をすることができるようになります。

2.世界中からの優秀なビジネスマンとのコネクションができる
世界中の有名企業から幹部候補生として派遣されている人などと、一緒に議論をしたりグループワークをしたりと密なコミュニケーションをするなかで、強いコネクションができます。卒業後も互いの国の企業を紹介しあったりと、コネクションが自身のビジネスにも生きます。

中小企業支援・国際協力に近づける、協会に参加すれば国内での横の人脈もできる中小企業診断士。中小企業診断士は、働きながらでも取得は可能です。海外人材としての即戦力+グローバルな人脈が得られるMBA。MBAは会社を辞めるか休むかしなければならない分よりハードルは高いですが、その分自身のキャリアをグローバルな方向に一気に転換させる強力な経験値を得られます。どちらも自己啓発にはなるものの、それ自体を目的とするにはかける時間とお金がもったいなさ過ぎます。なんとなくの憧れを持つだけでなく、目指す目的を自分なりに定義づけたうえで、取り組めば必ずその後の人生に有意義なものとなると思います。転職に関する投稿でも書きましたが、どちらも将来を見据えてその道具として打算的に活用していくものだと思います。