Sunday, September 25, 2016

[コンサルタントの働き方] エクセル・パワポだけじゃないコンサルタントの価値

今は経営コンサルタントとして働いていますが、この職業に着く前には私自身もなぜコンサルタントがクライアントに必要とされるのか、なぜ仕事として成り立っているのか、しっかりと考えたことはありませんでした。世の中には大いに役に立っているはずだ、自分も日々成長しながら世の中に役に立つことがしたい、程度の認識でした。

コンサルはパワーポイントとエクセルがちょっとできるだけだ、と偉そうに言う人もいますが、これは間違いです。それはうわべだけで仕事をしているコンサルタントです。全くの素人だった私が実際コンサルタントとして働いてみて感じた、その価値の発揮の仕方について書きたいと思います。

1.業界に強い
特定の業界や技術に強みを持ち、業界内のいろいろな関係者とのネットワークを持ち常に情報を仕入れながら、その業界の最先端の動向、業界内のベストプラクティス、業界特有の取り組み課題と取り組み方について深い知見を持ち、それに基づき顧客をリードしていきます。新興国進出がテーマであれば特定の国について詳しいこともこのうちに入ります。日系のシンクタンク系コンサル会社はこれを強みにした会社が多いと思います。

2.機能に強い
特定の機能(会計、サプライチェーン、カスタマーリレーションシップマネジメント、組織・人事等)に強みを持ち、業界に依らない方法論やスキル(+業界ごとの特徴)を武器にクライアント企業における機能の持ち方、実現の仕方を考えます。1.のような知見の共有ではなく、実際にその機能をクライアント企業に実装する必要があるため、プロジェクトは改革の実行支援型、長期のものとなります。外資系、特に会計ファーム系コンサルティング会社はこれを強みにした会社が多いと思います。

3.意思決定支援に強い
常に会社の改革プロジェクトを推進しているわけではないクライアント企業にとっては、その推進自体が大きなチャレンジとなります。なかでも社内の反対意見は大きな障害となります。そこに、コンサルタントが各社での経験から、その改革を進めるうえでどのような反対意見が出る可能性があり、どうやってその関係者を説得するのかの対応方針を明らかにしておくことで、クライアント企業の担当チームが予め手を打つことができ、改革を円滑を進めることができます。

たとえば、日本企業の改革をしようとするとき、こうすべきだの提案に対し経営層からは常に費用対効果は?の声が挙がり検討が行き詰まります。そこで、日本企業が取るべきアプローチとして、①定性的な論拠また費用対効果をざっくり試算したものを提示、「まずは小さく始めて効果を検証、実際に効果がありそうなら本格的に始めてはどうか」というストーリーで経営層を説得し小さくスタート、②その後小さく始めた取り組みの効果を確認、「実際に効果も出ており本格的に始めるべき」と経営層を改めて説得、の2段構えをとるべき、といった意思決定のシナリオづくりがクライアントにとっての価値になります。

4.プロジェクトマネジメントに強い
実際にクライアント企業が改革を進めようとすると、同時並行的に多くの取り組みが多くの社内外関係者によって進められます。こういった取り組みにクライアント企業が慣れていない場合、コンサルティング会社がそのマネジメントを支援する価値があります。ほとんどのケースで各所から多数の問題が出てきますが、対応の優先度・対応内容・タイミング等を考慮し、適宜クライアント企業内外のリソースを活用し対応しながら、改革も進めていくというプロジェクトマネジメント能力が求められます。

5.コミットメントが高い
会社で働いたことのある人ならわかると思いますが、部署などで何かやるべきことや役割分担、期日を決めて取り組んでもいろいろな事情により遅れてしまったり、活動そのものがなあなあになってしまったりします。ところがコンサルティング会社では、クライアント企業と話し合って決めた期日をきっちりと守ります。

実際にはコンサルティング会社側でもいろいろな事情(想定外の事実が発覚したり、工数見積もりが十分でなく想定以上に時間がかかったり、重大なミスがあり大きく手戻りが発生したり)により、期日通りの実施が難しそうな状況にもなります。中で働いている人は大変ですが、プロジェクトの確実な遂行自体がクライアント企業からみた価値であり、それに対してもお金を払っているという認識のため、コンサルティング会社側は必死に守ります。

また、何かの事情で想定のことができなければ、「~が理由でできませんでした。」といっては何の価値もないので、必死に代替手段を探して実現します。これらがクライアント企業からの信頼に変わっていきます。そういった時間を守り、何がなんでも目的を達成するマインドの人が集団で(※ここが特徴)同じ目標に向け動くことでクライアントが想像できないような時間と品質で仕事を仕上げます。

6.情報整理スキルが高い
クライアント企業が役員会などの重要な意思決定に提出できる品質で事実、課題、対応策等を整理、意味づけを行い、パワーポイント等資料化します。

例えば国×業界について調べた場合、それを縦横の表に内容を記入していくだけではあまり価値がありません。クライアント企業はそれをもとに役員会等で意思決定を行うことが目的としており、例えば共通の箇所はグループ化したり、それぞれの領域を特定の基準に沿って評価・優先度付けし、表現上は色の濃淡を変えたりして、一瞬で中身が理解でき且つ意思決定の材料になるような形にする必要があります。意思決定者達の「この資料でつまり何が言いたいの?」という質問に答えられる必要があります。これには一定のスキルが必要です。

また雑多な問題がある際に、それをロジックツリーの形に整理して示すことで、何が根本的な問題なのか等、問題構造の全体をクライアントのメンバーが理解し易いようにするといったこともあります。これも経験を積んでいなければわかりやすく整理するのは簡単ではありません。役員会などは社内の様々なテーマが集まってくるので、狙ったタイミングで決裁を得られなければ次回上申する枠が取れるのは何か月も先になってしまうこともあります。相手がいる場合などは待ち切れず話自体が流れてしまうこともあります。確実に改革を進めていくためには、目的に沿ったしっかりした内容を上げることが重要でそこを支援します。

7.計算・分析スキルが高い
例えばクライアントの新しい取り組みの想定効果の計算等、大量のデータの分析・それに基づくシミュレーションをクライアントに代わって行うことも価値です。分析・シミュレーションの内容はクライアントの事業や、テーマにもよるためなかなか決まった計算式やフォーマットを用意しておくことは難しく、都度クライアント企業の要望も踏まえながら計算式をエクセルで作っていきます。エクセルの式や関数などは、そこまで難しいものは使わないケースがほとんどですが、それらを組み合わせて大量のインプットデータに対して意図した計算・分析をやりきれる人が当該プロジェクトの担当部署にいないことも多いです。


コンサルタント個人レベルで見た場合、上記の1~7のうち、5~7は若手のうちに身に着けておくことが重要です。所謂コンサルが覚えるのはパワーポイント・エクセルだけという人の意見が該当するのは、6の内容をまとめる資料作成の部分、7の計算の部分です。それだけだと入社1~2年目のアナリストレベルです。そのうえでプロジェクト経験、そこでの顧客とのコミュニケーションを積みながら1~2のように自身の専門領域に特化していったり、3~4のようなクライアント企業の大きな改革プロジェクトの実行支援を強みとしていきます。

上記を意識しながらクライアント企業と真摯に向き合って仕事をしていれば、クライアントの担当者にコンサルティング会社がいてくれてよかった、あなたがいてくれてよかったと思われます。そして、「うちの会社に来たらどうか」や「来てくれるならいつでも席を用意しますよ」などと言われることもありますが、これはコンサルタントにとって最高の褒め言葉であり、私もそれを冗談でも言われたことを誇りに思っています。クライアントも社運、その部署の将来をかけた重要なプロジェクトとして必死に取り組んでおり、わずかでも思ってなければ冗談でも口にしません。残念なことに経験年数に関わらずこれを言われない人もいます。コンサルタントとして価値を出すことは、それだけ簡単ではないものの、可能ではあり、それがコンサルティング会社の存在する理由かと思います。コンサル業界を目指す方、入られたばかりの方、中小企業診断士として独立を目指す方の意識すべき点として、参考になればと思います。