Sunday, July 31, 2016

[Singapore] これが建国記念日イベントNDPだ!~NDPを通して学ぶシンガポールのいろいろ~

8月9日はシンガポールの建国記念日のため毎年休日になります。その日はNational Day Parade(NDP)といって建国記念日を祝うイベントがあるのですが、そのNDPのプレビュー1(予行練習)を観覧する機会に恵まれたのでその様子を共有したいと思います。

NPDの当日及びプレビューについては抽選に参加してチケットを入手する形となっているのですが、その抽選の申請資格はシンガポール国民か永住権保持者しかありません。ひとり2枚まで、当日か、プレビュー1(1回目の予行演習)か、プレビュー2(2回目の予行演習)か指定したうえで申し込む形となります。シンガポール人でも当たらないことの方が多く、友人や親戚との会話で「誰々は当たった、誰々は外れた」とお互いに当選落選の状況を共有したりするようです。

そのようななか、今回は運よく知人に誘われてNDPに参加することができました。場所は昨年と異なり、ナショナルスタジアムです。以前はナショナルスタジアムでも開催されていたようですが、新しくなってから(今のナショナルスタジアムは2014年6月オープン)初めてのナショナルスタジアムでの開催とのことです。調べてみたところ、新しくなる前の最後のナショナルスタジアムでの開催は2006年、2007-2009年はMarinabay、2010年はPadangという広場、2011-2014年は The float、建国50周年の2015年はPadangとThe floatでの開催であったとのことです(2015年は記憶に新しいですね)。

MRT Circle Line のNational Stutudium駅では、中華系・マレー系・インド系の人に関わらず赤い服を着た人ばかりです。


スタジアムに入ると席がやはり赤い服を着た人で埋め尽くされています。席はブロック単位でのみ決まっていて、チケットに書いてあるブロックのなかで誘導に促されて適当に座っていきます。自分の席に着くと、おみやげのリュックが置いてあります。赤と白の席の色に合わせて赤と白の色のリュックが置かれています。下の写真は右上から時計回りに、①席に挟まれるように置かれたリュック。②リュックはビニールでできた白か赤の半透明のもの。③中にはシンガポールの国旗、SINGAPOREと書かれたマフラー、顔に貼るシール、お店などのクーポンが冊子になったもの、そしてなぜか緑色で逆に目立つ明治ハローパンダ抹茶味(ハローパンダはコアラのマーチのような明治製菓によるお菓子で、過去に日本でも販売していたがその後撤退、シンガポールでは今でも販売しているというお菓子)、PUB(シンガポール公益事業庁、水道の供給などを実施)による再生水newaterのボトル(水資源の多くを隣国マレーシアに頼ってきたシンガポールが、水の自給率を揚上げるために再生水による水資源開発を推し進めている)、ピーナッツ、パンなどが入っています。④PUBの再生水のボトルを拡大したものです。赤いシャツを着た国民が大勢書かれているのがいい感じです。※写真をクリックして拡大すると見やすいです

下の写真は右上から時計周りに、①赤いシャツの人で埋め尽くされたナショナルスタジアム。 ②皆がマフラーを掲げた状態。③左奥に見えるのが有名なKallang Wave。④軍隊などが更新するパレードの後半で国旗が観客席を駆け上るサッカーの試合のような光景。

そして司会者の人たちが登場して会場を盛り上げた後、司会者達は控室側にショーの準備状況を確認しにいきます。そこで最初に登場したのが、SOKA Associationの方(シンガポール創価学会、シンガポールでは1985年に慈善団体となった)。スカートに絵柄が付いていてそれを一枚一枚めくっていくと絵柄が変わっていくという説明をしています。知らない人も多いと思いますがSOKA Associationは毎年NDPに参加しています。

次に、今回のNDPのテーマ曲Count On Me。サビの部分の手話を映像で解説します。皆が映像を見ながら真似して練習します。二つの手をグーにして左手を胸の前でぐるっと回して右手に載せて写真のポーズをするとシンガポールという意味だそうです。


そして来賓の入場です。観客が入り切ってから来賓が順次に入場していきます。私が観覧したのはプレビューだったため、いずれもその看板を持った役の人だったのですが、下の写真で順番に①MP(Member of Parliament:国会議員)、②MOS(Minister of State:担当大臣、内閣には属さない)、③CM(Cabinet Member:大臣、内閣に属する)、④ESM(Emeritus Senior Minister:名誉上級相、初代首相リー・クワンユーと息子の第3代首相リー・シエンロンの間で第2代首相を担っていたゴー・チョクトンを指す)が入場します。役の人はなり切っている人、少し照れている人の両方がいました。


そして、右上から時計回りに①ここから国軍各部隊の入場です。②その後PUB、Sembcorp、NTUC、Singtel、Kepple等政府系機関・企業等のぼりを持った人たちが入場します。③各者が整列したのちに白い車が入場、④中から出てきたのは首相リー・シエンロン役の人です。

①次に白い車がもう一台到着。②登場したのはJoseph Yuvaraj Pillay氏、これは役の人ではなく本人です。公務員として長年勤め、その間にシンガポール航空の会長を務めたり、その後シンガポール証券取引所の会長を務めたりした人です。③軍関係者に声を掛けています。④そして車にのり、会場を一周します。シンガポールの発展に多大な貢献をした人としての扱いなのだと思います。本番ではここでトニー・タン大統領が登場するのか、本番でもJoseph氏も登場するのかは本番を見てみないとわかりません。

ショーの中までは紹介しませんが、観客が最も盛り上がりを見せたのがショーの終盤でのSOKA Associationによる家族をテーマにした絵をスカートの柄でマスゲームのように再現したものでした。その演技からシームレスにフィナーレに移り、本日出演した全員が会場に現れ冒頭のCount On Meを歌い、歌に合わせ手話をします。観客も皆手話の振り付けを必死に真似ています。下の写真、右下に少し高い位置にいる白い服を着た女性が奥のモニターに映っているのですが、Count On Meの歌とあわせ手話をしていて、間でシンガポールのバンドの53Aの演奏、国歌などもありその間も歌詞を手話でずっと表現していて、なかでも際立った存在感でした。

その振り付けは事前にYoutubeでも見ることができます。8月9日当日テレビで見られる方は事前に映像を見て練習されるとより深い楽しみ方ができると思います。


最後に国歌と、シンガポール国民の誓い(Singapore National Pledge)を斉唱して終わりになります。ステージの上は引き続き音楽も流れていてお祭りムードでしたが、観客席の人は終わりのアナウンスもまだないままバラバラと帰り始めます。これも映画館でエンドロールが流れ始めるとすぐ席を立つシンガポール人らしいですね。

ちなみに全員が起立してシンガポール国民の誓いを斉唱する姿は日本人からすると羨ましく感じます。会社でいうと、コア・バリュー、WayやCredoのように行動の基本となる指針を明文化して共有することは、実際に集団をある一定のプラスの方向に導くのに有効であると思います。そのような日がくるかはわかりませんが、日本にとってもそういったものを持っていた方が望ましいのではと思ってしまいます。

NDPはこのように実質1時間半くらいのイベントなのですが、外国人にとってもNDPを通してシンガポール政府の要職、要人、日本の企業や団体との関係、水・おかしの歴史、国歌・シンガポール国民の誓い、とシンガポールを形成しているいろいろなことがぎっしりと詰まっています。8月9日のシンガポールの建国記念日にシンガポールにいる方はぜひテレビでNDPをいろいろと思いを巡らしながら見て頂けるといいかと思います。

※本記事は、特定の国・団体及びその活動自体についてその良し悪しを述べることを目的としたもの、またその議論を巻き起こすことを意図したものではありません。シンガポールにおける歴史・文化に関わる事実を共有し、理解を深めることを意図しています。
※本記事は、知り得た、調べ得た情報に基づいて記載しておりますが、必ずしもいずれの間違いを含んでいないことを保証するものではありません。

Saturday, July 30, 2016

[中小企業診断士] 中小企業診断士の国際協力

中小企業診断士の国際業務というと、海外の市場調査・拠点設立支援・海外企業とのマッチング支援等の海外進出支援をイメージされる方が多いと思いますが、もうひとつに国際協力関連の業務があります。

中小企業診断士の資格を取得することで、国際協力の分野での活躍も期待できることについては下記記事でも触れました。

診断士の国際協力は、新興国の中小企業支援機関のへの研修実施・制度整備支援や、現地の中小企業従業員への研修実施、左記に加え現地の中小企業の現場に入りこみ現場を変えていくタイプの支援もあります。学生時代などに国際協力の現場に携わりたいと考えていた方も多いとは思いますが、なかでも現場に入り込むような支援をイメージされていた方が多いのではないでしょうか。中小企業診断士はそれを仕事として行うことができます。

ここで言いたいのは、国際協力とは、JICAに入所したり、海外の大学院の国際関係学を学んで国連等の国際機関に所属するだけでなく、中小企業診断士として経験を積むことでもできるということです。そのハードルは確率・費用などの観点から左記の2つよりもはるかに低いと思います。さらにJICAや国際機関で勤務している人よりもより現場に近い場所で支援することができます。これは学生時代に国際協力に携わってみたいと考えていたが結局一般企業に就職、国際協力に携わりたいという気持ちが頭の片隅にずっとあったような方には絶好の機会だと私は思っています。且つ自身が企業で学んできたことを活かしつつ専門家として国際協力に携わることができ、現職でしっかりと専門性を身に着けること、中小企業診断士の資格を取得する大きなモチベーションとなるのではと思います。私自身も中小企業診断士の国際協力について知ったことが取得に向けた学習意欲継続を可能にしてくれました。

自身が中小企業診断士資格の学習を始めた10年前ころは、そういった情報もネット上ではほとんど見つけることができなかったのですが、今では見つけることができます。その例を下記に紹介したいと思います。国際協力に携わりたいとなんとなく思ってきて、診断士資格の学習をしている、仕様と思っている人にとっての励みになればと思います。

国際協力の仕事は日本のJIKAやHIDA(一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)による国際協力事業として、国際開発コンサルティング会社・診断士等の専門家がそのプロジェクトを実施する形となっていますので、実際にその仕事をするためには入札に参加して業務を勝ち取らなければなりませんが、そのアプローチとしても下記は参考になると思います。

開発途上国の中小企業振興支援に挑む
【第1回】カメルーンで活かす日本の中小企業勤務&支援経験
【第2回】カメルーンに対する日本の中小企業振興支援の特徴
【第3回】中小企業診断士の役割は、海外でも日本でも「触媒」

国際派の若手女性診断士
【第1回】相手の立場を理解できるコンサルタントに
【第2回】診断士資格で仕事の芽が増える
【第3回】「おせっかい」が仕事につながる

舞台は世界へ-国際派診断士への道
【第1回】予想外に早くスタートした海外業務
【第2回】海外業務のやりがいと苦労

東ティモールで活躍する女性診断士
【第1回】中小企業診断士が携わる国際協力活動
【第2回】東ティモールでの調査活動
【第3回】東ティモールのプロジェクトを終えて

Sunday, July 24, 2016

[Singapore] 東京カレンダーのシンガポール特集はSJ50だったがその後の記事は味をしめただけか

昨年のシンガポール建国50周年のSG50に引き続き、今年はSJ50だとよくウェブ上で目にすると思います。SJ50とはシンガポールと日本の外交樹立50周年のことで、またそれにあたり両国の政府観光局がそれぞれ観光を促進するための事業を行うものです。

シンガポールの政府観光局は日本人向けにSJ50の特集ページを作っています。
http://www.sj50.jp/

日本の政府観光局のウェブサイトでは両国政府観光局の活動計画が紹介されています。
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/20160128_press_release.pdf

内容から、日本の政府観光局はシンガポールからの観光客誘致のための活動を行い、シンガポールの政府観光局は日本からの観光客誘致のための活動を行うものであると理解できます。日本の政府観光局の取り組みは例えばJapanese Restaurant Week in Singaporeとして、シンガポールの日本料理店などで日本旅行の当たる抽選の張り紙などが掲示されていたのを記憶している方も多いと思います。シンガポールの政府観光局の取り組みは、日本のスーパーマーケットの成城石井でシンガポール料理を惣菜にしたものを販売するなどです。

成城石井での取り組みは下記にて紹介されています。
http://www.seijoishii.co.jp/whatsnew/press/desc/182

海南鶏飯、プロウン・ミー、チャー・クェイ・テォ(※ウェブサイト上の表記を引用、正式な発音はチャーオ・クァイ・ティアオだと思います)等が販売されたとのことです。シンガポール風ラクサを発売した結果、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会主催の「お弁当・お惣菜大賞2015 麺部門」で最優秀賞を受賞し、シンガポールの政府観光局の目に留まったのがきっかけのようです。

いくつか事例を紹介しましたが、これはいずれも費用がかかるもので、当然のことながら両国の税金が使われています。日本政府観光局の取り組みは日本の税金、シンガポール政府観光局の取り組みはシンガポールの税金です。

上記の日本政府観光局のウェブサイト上ではシンガポール政府観光局の連絡先が博報堂内となっています。つまり、シンガポール政府観光局が博報堂に関連の活動を委託、博報堂がシンガポール政府観光局とともに活動のアイデア出し、実施等をしていることが伺えます。

そこで最近話題になっていた東京カレンダーのシンガポール特集「シンガポール・ラブストーリー」。記事自体は、シンガポールに旅行にきた日本人女性と現地で働く日本人男性の出会いを通じて、そのなかで様々なシンガポールの観光地やホテル、料理店等を紹介していくというものでした。これはとても話題になりました。現地在住日本人だけでなく、普段シンガポールに関わりのない日本の知人のフェイスブックなどでも言及されていたりしました。下記のようにシンガポール政府観光局のフェイスブック上でも紹介されていました。

東京カレンダー シンガポール・ラブストーリー
https://tokyo-calendar.jp/article/5751


記事の一番上の左側にPRと書いてあります。これは、この記事はスポンサーがお金を出して書かれた記事である、ことを示しているのではと考えられます。つまり、シンガポール政府観光局→博報堂→東京カレンダーの流れで業務委託がなされて、費用が東京カレンダーに支払われているものと想定されます。

問題なのはその後に出てきた同じくシンガポール特集なのですが、「シンガポール大逆転」という題で、10以上の記事が書かれています。

東京カレンダー シンガポール大逆転
https://tokyo-calendar.jp/story/3991

日本人女性がシンガポールに移住し現地のお金持ちの男性を見つけ結婚、今まで自分を見下していた人たちを逆に見下し返す、駐妻は現地のお金持ちと結婚した人や金融系の仕事をしている人と結婚した人達にくらべて最下層である、どういう人がAランクで、Bランクで、住んでいるコンドでもランクが決まる、という虚栄心だけに訴えかけるような記事です。事実誤認があったり、シンガポールの文化・食などが一切紹介されていない、シンガポールの写真も一切ないなど「シンガポール」をネタにただひたすらに虚栄心に訴えかけるような記事を書いているだけに見えます。

日本だと相手にされなくなった女性でもシンガポールで日本人の市場価値が高くちやほやされる、とシンガポールが逃げ場のような形で書かれているし(シンガポールはこんな理由で日本人に来てほしいのでしょうか?)、11番目の記事では「何よりもエリカが呆れてしまったのは、東京では明らかに市場価値が低いに違いない日本人の女たちだった。 売れない年増のモデルや、プライドばかり高いCA、明らかに恋愛目的でシンガポールに逃げるようにやってきて、金持ちを渡り歩く女たちにしょっちゅう遭遇した。」「シンガポールは確かに景気がいいかも知れないけど、言ってしまえばお金だけ。結局、東京の方がずっとずっと洗練されてると思うわ。」と、登場人物のコメントとはいえ、シンガポールを見下しているようにしか見えません。

これらのシリーズについてもSJ50でシンガポール国の税金が出ているとしたらお金の使い方として問題になるレベルだと思いますが、「シンガポール・ラブストーリー」にあったようなPRの記載はないので、そうではないのだと思います。
想定としては、「シンガポール・ラブストーリー」が成功して多くのページビューを獲得できたため、東京カレンダーが自分たちでもシンガポールをネタに記事を書いたが、品質を管理できずに結局「シンガポール・ラブストーリー」でお客さんであったはずのシンガポールのイメージさえも悪くするような記事を量産してしまったという状況なのかと思います。

ちなみに、もともと上記のシンガポールの政府観光局のSJ50の特集ページから「シンガポール・ラブストーリー」へのリンクが貼ってあったのですが、今はなくなっています。

その国へのリスペクトがあるかどうかはその文章を読めばすぐにわかってしまいます。今後について敢えて言うならば、そこに最大限気を遣いながら、本当に読者がシンガポールに行きたくなるような文章、シンガポールの人が日本の人に読んでもらいたいと思うような文章を書くことが大事だと思います。そうでなく、ページビュー稼ぎのためだけにシンガポールを引き合いに出すことはシンガポール人、シンガポールが本当に好きで住んでいる人、志を持って移住した人に失礼です。